屋根越エテ 紙飛行機ヤ 天高シ
昨年の秋、祖母が栗拾いに行くと言い出した。
栗を拾う山と、そこに続く急勾配な坂道を知っている孫として、
転げ落ちるからやめておけ、と言いながらも、
まぁ、秋に帰省していることも珍しい、と考え直してついて行った。
帰り道、もういい歳なのだから一人では行くなと釘を刺したのを覚えているが、
今年もやはり一人で登ったらしい。
傘寿を過ぎた祖母が、あの道を登るところを思うと、こちらは気が気ではない、
と電話口で告げると、からからと笑って、今年はよう穫れた、と言う。
この部屋で、ディスプレイから視線を上げると、祖父の詠んだ秋の句が読める。
石州瓦と秋の空と紙飛行機の句だ。
読むたびに色と被写界深度のコントラストが鮮明に視える。
おそらくは仏前にも供えてあるであろう茹で栗を、
包丁で両断して匙で掻き出して口に運ぶ。
by HIRA